「設計力Ⓡ」とはやりきる力43
この連載「設計力」は、今回が43回目となりますが、今回で一区切りとします。昨年の10月から10カ月間お付き合い頂き、ありがとう御座いました。
この連載「設計力」は、今回が43回目となりますが、今回で一区切りとします。昨年の10月から10カ月間お付き合い頂き、ありがとう御座いました。
少し前になりますが、大いに興味を引く新聞記事がありました。「国立天文台などの研究チームが、天の川銀河は中心付近にある天体も、中心から約5万光年離れた外周付近の天体もほぼ同じ速度で銀河中心を軸に回っている。宇宙にある質量の多くを占めると考えられる「暗黒物質」が大量にないと説明できない現象と、発表した」。
ホンダは2040年までに世界での新車販売を全て電気自動車(EV)と燃料電池自動車(FCV)に切り替えると打ち出した。トヨタとホンダがレベル2、3の自動運転機能を市販車へ搭載。電動化、自動運転化への取り組みから目が離せない。
先月、3月決算の多くの企業が業績を発表しました。決算書を前にし、今期こそは自社製品や部品をものにと、意気込む経営者も見えるでしょう。はやる気持ちは分かりますが、一呼吸おいて欲しいのです。
高年齢者雇用安定法が改正され今年の4月から施行されています。希望する者に70歳までの就業機会を確保することが企業の努力義務となりました。
先週ある企業で、設計部署へ配属された新入社員へ研修を行った。コロナ禍オンラインで行ったが、若さが伝わってきた。今回は設計部署に配属された新人の皆様へエール。それは「急がば回れ」。
よく耳にする「今必要なのはイノベーション」。中小企業の経営者が翻訳すると、「新しい部品や製品を手掛ける」でしょうか。経験したことがない加工や組み立てでも、取り組む中小企業にとって、さまにイノベーションです。
欧米や中国など相次ぎ、自動車の電動化に向けた方針を打ち出しています。日本もしかりです。電動化はまだ先との感がありましたが、あっという間に様変わり。中小企業の経営者の方々も、5年、10年後に自動車部品がどのように変わるのか、今受注している部品は減るのか、どうなっていくのか、見通す必要性が高まっています。
「今期こそは・・」との「思い」を持たれた方も多いでしょう。それにもかかわらず、その思いがもう地平線の彼方に沈みかけていないでしょうか。「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」。新たな期は必ず訪れますが、同じ思いで迎えられるとは限らないのです。できれば、前期は頑張った、今期は一層良くしようと、前向きな思いを持ち続けたいものです。
仕事柄、「デザインレビュー(DR)がうまくいきません」と相談を受けることが結構あります。何が問題かを見いだすには、やはり現場を見ることです。半年ほど前のこと、「DRを見学できますか」と言ってみましたが、「扱う内容は部外者には開示できません」。もっともなこと。
提案型の設計については第25回のこの欄で取り上げました。それは顧客の立場に立って「真のニーズ」を見極め、新たな製品や部品を提案することでした。しかし、部品メーカーの中には「大変な取り組みだ、出来るかな」との思われる方もみえるでしょう。
政府が2035年までに乗用車の新車販売をすべて、ハイブリッド車などの電動車にとの目標を掲げています。先月、ホンダは2040年に世界市場で販売する全車両を電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にすると表明。電動化の動きから目が離せません。
5月も下旬、既に入社され設計部署へ配属となった方もみえるでしょう。私も入社当時の職場は自動車部品の設計でした。ところで、仕事柄、これまで1000人以上に「図面は誰が描くのか」と問い掛けました。返ってきた答えは全て「設計者」でした。設計は設計者だけで完結するとか、CADで図面を作成することが設計との思いの表れでしょう。
ものづくりは、自分の思いをもので表現し、お客様の笑顔を実現する。やりがいのいっぱい詰まった世界です。だが、楽ではない。同じ汗をかくなら、地域、日本、いや世界No.1(品質やコストがダントツ)を目指そうではないか。そうすれば、ものづくりの素晴らしさを実感できます。
「あなたは設計のプロフェッショナルですね」と問いかけられたら何と答えますか。今回は、「設計のプロフェッショナルとは、あなたのこと」を取り上げます。10年あまり前になりますが、NHKの「プロジェクトX」という番組で、燃料電池車(FCV)の開発を取り上げていました。番組では開発に必要な「思い」を、さまざまな場面と絡めて紹介していました。
一昨年、仕事で秋の東北を訪れた時のこと。稲穂が頭(こうべ)を垂れ、新米への準備が整いつつあった。雨にも風にも負けず、猛暑にもおろおろせず、すっくと立つ稲に、「困難に立ち向かう」設計者はよく似ているなと、徒然(つれづれ)なるままに考えた。
設計は、お客様のニーズの把握から図面を次の工程に渡すまで、長くてタフな道のりです。この道のりを一歩一歩着実にこなすのが、設計リーダーです。
自動車部品メーカーで設計に携わっていた頃を振り返り、そのスタンスを一言で表現せよと言われれば、「手抜きをしないこと(手前味噌で恐縮―)」と答えます。だが、これは素晴らしい成果を出したということではありません。むしろその逆で、設計は失敗の繰り返しでした。やっとのことで量産(生産開始)にこぎつけた部品で半端ではない赤字を出したこともあります。設計の経験はまさに悪戦苦闘、修羅場の連続でした。だが、逃げることなく取り組むことで設計について多くのことを悟りました。それがこの連載「設計力」です。
「提案型の設計をしたいのですが・・」と問いかけられる。筆者は、顧客の「真のニーズ」を見極めていますか、と聞き返します。「真のニーズ」とは、組み付けやすくしたい、もっと高速で動かしたいなど、顧客にとっての「うれしさ」です。うれしさをつかむと「提案型の設計」が可能となります。このように設計すれば、こんなうれしさが見込めますと、顧客へ投げかけることが出来るのです。こうです。顧客の現場で部品の組付けに立ち会ったが、作業がしにくいようだ。そこで「先端を面取り形状にすれば、スムーズに組み付きます」、と言う。このようにうれしさ、つまり真のニーズを見出し、顧客へ投げかける。これが「提案型の設計」の基本です。
「原価を半減しないと・・」と追い込まれたことはありますか。筆者の苦労話です。80年代中頃、温度センサーの設計を担当しました。それは、数個の部品からなる、コイン1,2枚で済む安価でシンプルな車載製品でした。ジャパン・アズ・ナンバーワンと騒がれていた当時、円高が急激に進みました。海外製品との競争が激しくなり、撤退を考慮する事態に追い込まれたのです。しかし、その製品の担当であった筆者としては切なく、なんとか生産を続けたかった。
「設計職場の風土は?」と聞かれた何と答えますか。期待はこうです。「守るべきWAY」と「変革のWAY」が両立している。
設計者のあなたには、「優位性」を確保する設計と、顧客の「信頼」を得る取り組みを区別して欲しいと「第18回優位性と信頼が基本」で述べました。後者の信頼を得る取り組みは、品質不具合を出さない「品質120%」の達成を目指す取り組みでした。
仕事柄、設計担当者からしばしば次のような相談を受けます。「忙しくて、職場で決まっている設計プロセス(手順)をこなすことができない。何か良い方法はないですか」と。こう聞いてくる人は「忙しければ、手順を飛ばすしかないですね」という回答を期待しているような気がします。しかし、私の答えは決まっている。「設計手順は職場のルールです。やるしかありません」。
設計者のあなたは「無から造りだしたものがあるか」と問われたら何と答えますか。私は今、机に向かってパソコンでこの原稿を作成しています。上を向くと蛍光灯が目に入り、横を向くと壁と窓…。私たちの周りは物であふれている。人間は実に多くのものを造ってきました。しかし、無から造りだしたものはあるかと問うと、「何もない」ということに驚きを持って気づく。何のことはない、私たちは地球にあったものを吸い出し、掘り出し、生えているものを伐採して、それらを加工してきたのです。限りなく複雑・高精度な加工もあるでしょう。だが、所詮私たちの周りにもともと存在するものに手を加えただけです。
仕事柄、設計担当者からしばしば次のような相談を受けます。「忙しくて、職場で決まっている設計プロセス(手順)をこなすことができない。何か良い方法はないですか」と。こう聞いてくる人は「忙しければ、手順を飛ばすしかないですね」という回答を期待しているような気がします。しかし、私の答えは決まっている。「設計手順は職場のルールです。やるしかありません」。
設計者のあなたは、「競合メーカーに勝つ」設計と「繰り返し受注する」設計を区別できていますか。
前回は、筆者の経験「顧客ニーズの聞きこみから始まり、図面を次の工程に渡すまで」を紹介しました。今回は、設計者のあなたに取り組んで欲しい、三つの「役割」を取り上げます。
自動車部品メーカーで設計を担当していたときの経験です。顧客の自動車メーカーから、「雨の降り方に応じワイパースピードが自動で変わるシステムを搭載したい。主要部品となるセンサーを開発して欲しい」と声をかけられました。そのセンサーで雨がパラパラ降っているのか、ジャージャーなのかを判断するのです。
「品質不具合は、技術さえあれば防げる?」。設計者のあなたには「いいえ」と答えて欲しい。
コロナウイルスが勢いを増す中、緊急事態宣言が出された。弊社の取引先は製造業も多いが、在宅勤務です。設計も在宅勤務ありきで、取り組まねばなりません。
昨年になるが、デンソーが自動車部品のリコールで2020年3月期決算は大幅減益。当時こう思った。「品質不具合はなくならない」、「在宅勤務で、品質不具合は減るのか、増えるのか?」と。
設計から「図面を出す日になったが、もう少し待って」、製造から「この寸法は加工が難しい、公差を広げて」、よく出会う風景。この投げかけに、どのように答えますか?
設計から「図面を出す日になったが、もう少し待って」、製造から「この寸法は加工が難しい、公差を広げて」、よく出会う風景。この投げかけに、どのように答えますか?
設計の担当者から「こんなに多くの手順をやらないといけないのですか」と聞かれたら、管理者であるあなたは「なぜこのようになっているのか」を説明せねばなりません。担当者が納得すれば、持てる力を発揮するでしょう。
前回は、「設計者」は「まっとうな図面」を出さねばならない、でした。まっとうとは、お客様満足度100%ということです。
CADの前に座っていれば設計者? そう、少し物足らないですね。設計に携わる人はCADを扱う(技術検討を含む)技術屋さんに留まるのでなく、「設計者」であって欲しいのです。設計者はCADに取りかかるまでに、大切な「役割」が二つあります。
決裁の場で図面がOKとなり手配、ところが、部品が組み付かない、設計通り動かない、はたまた納入先から呼び出しを食らう、筆者のかつての経験です。同じという方も結構見えるのではないでしょうか。
先週、デザインレビュー(DR)は気づきの場で、参加者の中の最上位の職位の人の独断場であってはいけないし、無難に通り過ぎよう(形骸化)という場ではないと述べました。
「デザインレビュー(DR)をやって良かったと思うには—」と、しばしば問いかけられます。筆者は「そのため、この場にお越し頂きました」、と一日の研修をスタートします。一筋縄ではいかないのがDRです。今回はDRの「役割」と「特に気をつけたいこと」を取り上げます。
品質不具合の件数を減らす効果的な方法は、失敗の経験をしっかり残すこと、と先週取り上げました。
先週この欄では、設計の品質不具合はなくせないことを取り上げました。とは言え、なくせいないまでも、減らすにはどうすればよいのでしょう。
なぜ品質不具合をなくせないのでしょうか。
今や製造業は100年に一度の変革期に突入した—。IoT(Internet of Things)や人工知能(AI)など新たな技術が登場し、ものづくりの世界を劇的に変えつつあります。とはいえ、どのような技術が登場しようと、製造業の基本に変わりはありません。それは、競合企業に対し品質やコストの面で「優位性」を確保し、お客様の「信頼」を保ち続けることです。この普遍的な課題の要となるのが、一つにはカイゼンなどの「現場力」、もう一つには設計段階をやりきる力「設計力」です。「現場力」と「設計力」は「ものづくりの両輪」です。