技術経営士ジャーナル
特集

2025年度 インフラの維持と未来

日本の上下水道インフラ危機への対応 ~課題とその解決に向けて~

日本の上水道管路の敷設は、1980~2005年度頃が多い。法定耐用年数40年を経過した管路の割合は、2021年度で約22%。これが2031年度には約41%、2041年度には約66%へと急増する(図1参照)。 一方、下水道管路の敷設は、1990~2005年度頃が多い。標準耐用年数50年を経過した管路の延長は、2022年度で総延長の約7%。これが2032年度には約19%、2042年度には約40%へと急増する。下水道施設では、上水道施設の約10年遅れで管路更新投資の額が膨らむことが予想される。

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劣化するモビリティサービスへの取組と技術革新

人口減少と高齢化が進むなか、社会経済を支える「人流・物流」はどうなるのか?国土全体での人口の低密度化と地域偏在が、一部大都市を除き同時進行する中で、モビリティサービスの急速な劣化にどう対処すべきか?本稿では、鉄道分野を除く交通サービスについて、公開情報をもとにファクトベースで 現状把握をしたうえで、最新の制度改革や地域交通政策再設計の動きと、技術革新によるモビリティトランスフォーメーション(MX)、とりわけ自動運転技術導入を通じて持続可能な新しい交通インフラ構築を目指す動きを解説し、今後の在り方を展望・提言する。

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情報通信インフラの発展と技術革新

情報通信インフラは、現代社会の産業・生活を支える「神経ネットワーク」であり、多様なサービスの拡大に対応する形で、技術革新を取り入れながら発展を遂げてきた。しかし、昨今の激甚広域災害、人口減少・地域間格差、安全保障等の課題に対応するために、国家戦略としての取組みの強化推進が求められている。そしてその課題解決の有望な手段と考えられ、日本の未来を切り拓く技術「IOWN」の可能性についても、考察・提言する。

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「S+3E」達成に向け電力システムを再考する

日本の電力自由化は、1995年の発電の自由化から4次にわたり段階的に拡大(産業用・業務用の高圧50kW以上の需要の小売りが自由化)され、東日本大震災を契機に、電力システム改革(第5次制度改革)が断行され今日に至っている。電力システム改革の目的は、*安定供給の確保 *電気料金の最大限の抑制 *需要家の選択肢や事業機会の拡大とされ、下記の3段階で進められた。

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エネルギーインフラの再構築における再生可能エネルギーの役割と課題

エネルギーを取り巻く環境には、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の悪化等による地政学リスクの高まり、脱炭素化への動き、激甚災害の多発などの大きな変化がみられる。エネルギー供給構造が脆弱な日本は、こうした大きな変化による危機やショックを長年にわたって築かれたエネルギーインフラによって乗り越えてきたが、ここにきてインフラの老朽化や劣化も目立ち、その再構築が必要となっている。

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原子力の現状と将来

2011年3月11日に発生した福島第一原発事故を受けて、原発を利用していたドイツ、韓国、ベルギー、台湾、スイス等が脱原発の方針を表明したが、その後、ドイツを除き各国は方針を撤回した。現在原発を利用せず将来も非利用だったイタリアもエネルギー政策を再検討する方向にある。温暖化対策やエネルギー安全保障のために、引き続き原発を利用する国、将来導入を計画する国が増えている。

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